個別漫画紹介#02 「血と灰の女王」(バコ ハジメ)
こんにちは。
第二回は
バコ ハジメさんの「血と灰の女王」です。
(縛りとして、2巻後半以降のネタバレは極力控えていく所存です)
あらすじ
(主人公は1巻表紙のドミノという設定ですが、いち読者からすると2巻表紙の佐神善の方が近い役割を担っている気がします)
富士山が噴火して以来、日本の、そしてこの街の夜が一変した――火山灰をかぶった一部の人間達は驚異的な力を誇る闘争型ヴァンパイアとなり血で血を洗う殺し合いを開始!トップに立った者は全世界を支配するルールの中で、落ちぶれた令嬢・ドミノが這い上がる!!
閲覧注意のダークホラーバトル、開幕!!
富士山の噴火から4ヶ月、火山灰が降り注ぎ、学校が半日授業になりながらも、佐神善(さがみ ぜん)と友人・京介はいつもと変わらない平凡な放課後を過ごしていた。
…校門の前で解体されたネコの姿を発見するまでは。
すぐにひと目からネコを離した善は、まだ息のある命を腕の中に抱え、その最期を温かく見守った。
同日、帰宅して飼い猫が一匹逃げ出していたことに気づいた佐神善は、廃虚の中を探し回るうちに、自分のネコを解体しようとしている見知らぬ男と出会う。
男が酒で酔っていたことを見抜いた善は、隙をみて男を攻撃し、飼い猫を救出する。
すぐにその場を離れようとした善だったが、校門前にいたネコと同じく「生かしたまま解体された姿」を見て怒りを覚え、男を拘束し、警察へ連絡しようと試みる。
ところが突然、男は怪物のような姿へ変身し、簡単に拘束を破ったあと、善の片腕を吹き飛ばすのだった。
死を覚悟した善だったが、間一髪で駆けつけた少女・ドミノによって敵が逃亡したため、命を助けられる形となる。
血を流し、重症を負った善を前にしたドミノは、なぜか冷静な態度で「大丈夫」と声をかける。
善の肉体は“ヴァンパイア”として再生が始まっていた。
ここまでが第一話目です。
この後、ドミノにより富士山の噴火を合図に「夜にのみ変身できる体で、王を決める戦いが行われている事実」を知り、次第に戦いの中へ身を投じていくことになります。
個人的な感想も挟みますと
ここまで設定が「東京喰種」に近く、私も同じ系統と思って読み進めていましたが、3巻あたりからキャラクターが増え、純粋なバトル漫画として楽しむようになりました。
後述する「変身体」や「能力」などがキャラクターを語る上で重要となり、徐々にバトルの要素が強くなっていきます。
作風
殺し合いの最中でも敵の人格や価値観を理解していくことが最大の特徴のバトル漫画と言えると思います。
本作の主人公の佐神善は洞察力に長けていて、相手の言動や仕草から価値観を計ったり、話し合いが通じる人間かを常に吟味し、戦闘に臨んでいます。
これは善が始めて“格下”を相手に戦う場面です。
一介の読者からするとこの雑魚敵から見てとれる情報は残虐・傲慢・軽率などのマイナスなイメージが多くなると思います。
しかし、善は相手の「服装」にまで目を向け、人格を導き出していきます。
バトル漫画は「戦って当たり前」「エゴを貫いて当たり前」な世界で、殺す人間の性格までも分析してしまう主人公。例え敵だとしても、最後まで個々のキャラクターらしい落とし所を探って散っていく展開が多いのが特徴的な作品です。
全てのキャラクターにドラマを作ることで、ストーリーに厚みを持たせており、多くの読者が惹き込まれる大きな要因となっていると思います。
魅力
本作の魅力はズバリ変身して戦うことにあります。
バトル漫画で肉体を操作して能力を強化する設定はもはやセオリーですが、血と灰の女王はまさに『変身』という言葉がしっくりくる、人間の姿とは全く異なるもう一つのデザインを個々のキャラクターが得ています。
つまり『戦闘態勢に入る』という展開ひとつで、一定のクオリティの演出を生み続けることができます。
また、全てのキャラクターに共通で使える、という点がとても優れており、新キャラが登場する限りは死にづらい武器となっています。
特にいち推しの変身体が、
主人公の最初の戦闘相手であり、ライバル的な存在となるキャラクター・狩野京児(かりの きょうじ)。
善の『羽』やドミノの『ゴム質』とも違った、『鉄』をイメージさせる、黒一色の防御重視の外観。
これで能力がまた電撃なので、バトル漫画好きの層にはたまらないスペックとなっています。
最新話でも様々な「変身体」を持つキャラクターが登場しており、その風貌から能力を推察するのがいちいち面白いので、コミックスを揃え終えた後は、マンガワンにて最新話を追っていくことをオススメします。
というわけで、第二回は
バコ ハジメさんの「血と灰の女王」でした。
未読の方はチェックしてみて下さい。
2020年3月19日に最新10巻が発売されています。
第一回
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